生きていくうえでとても大切な役割を果たしている汗は、老廃物を排出したり、上がり過ぎた体温を下げたりする働きがあります。体の機能を保つ大切な働きを担っている一方、汗はベタベタして不快に感じることも多いです。特に腋に汗をかくと、臭いが気になったり、シャツの腋の下部分に染みや黄ばみが浮き出たりするため、ほとんどの人が可能な限りワキ汗を抑えたいでしょう。
汗をかく主な原因に、温熱性発汗と、精神性発汗、味覚性発汗があります。体の恒常性を維持する大切な役割を果たしている温熱性発汗は、高い気温や運動した直後など、上昇した体温を下げるために全身から出る汗です。手のひらや足裏、腋から出る精神性発汗は、ストレスを感じたり、緊張が高まったり、驚いたときなど、精神的な刺激によって出るベタベタした汗です。鼻や額、顔の周り、腋などから出る味覚性発汗は、辛いものを食べたときに出る汗で、食べ終わると徐々に治まっていきます。
皮膚に2種類ある汗腺のうち、ほぼ全身に分布しているエクリン腺に対し、アポクリン腺は、耳やおへそ、乳輪、腋の下などの限られた場所に集まっています。エクリン腺とアポクリン腺があり、風通しが悪く汗が乾き難い腋は、多くの汗を感じたり、臭いが強かったり、シャツの腋の下部分に汗染みがついてしまうのかもしれません。
運動後や高温の場所にいたとき、汗臭さを感じた経験が誰にもありそうですが、出たばかりの汗はほぼ無臭です。アポクリン腺から出た汗には、臭いの原因になる脂質やタンパク質などが含まれているものの、大半は、皮膚にある細菌によって分解された汗が作った物質の臭いです。全ての汗が嫌な臭いになるとは限らず、大切な役割がある汗を抑える必要はありませんが、腋から出る嫌な臭いは抑えたいものです。
ほとんど臭わない出たばかりの汗を放置してしまった結果、嫌な臭いがするワキ汗を抑えるにはこまめに汗を拭き取り、細菌によって発生する臭いを防ぎましょう。一時的に汗を抑えてくれる制汗剤は、汗腺を引き締める効果や、汗の出口に蓋をするような成分が入っています。シートタイプやロールオンタイプ、スプレータイプなど、いろいろなタイプが販売されている制汗剤は、シーンに合わせて使い分けると便利です。よく似ているものの、制汗剤にない効果があるデオドランド剤は、雑菌の繁殖を防ぎ、臭いを抑えたり、除去したりしてくれますが、使う目的を間違えないようにしましょう。
ほかの人に比べ、腋の下の汗が多い、腋の下から嫌な臭いがするなど、気になることがあるなら、腋臭症や多汗症の可能性があり、皮膚科を受診し専門医に相談しましょう。腋臭症の治療は、発汗を抑えるボトックス注射や、汗腺を除去する手術によって、汗を止める方法もあります。
臭いと同じくらい気になることは、シャツの腋の部分に浮き出る、意外に目立つワキ汗の汗染みです。腋の下部分にどうしても付着してしまう汗の汗染みが、人からはっきり見えると恥ずかしいものです。放置した汗染みが衣類に残り、黄ばみになるのを防ぐには、ワキ汗取りのパットがついたキャミソールやタンクトップなどを着用しましょう。さらに、シャツやブラウスの腋の部分につけるパットやシートを使うと、汗が直に衣類に付着することを防いでくれます。男性も綿や麻素材のアンダーシャツを着た上にワイシャツを着用すると、かなり汗染みが防げます。洗濯時の汗染み対策は、白の衣類だけなら塩素系漂白剤、色柄物の衣類なら酸素系漂白剤を洗剤と一緒に入れます。漂白剤でも落ちないしつこい汗染みには、500mlの人肌ほどのぬるま湯に、大さじ1杯の重曹を入れた重曹水に浸け、浸け置き洗いすると落ちやすくなります。
汗をかくことは悪いことではありませんが、臭いに関するハラスメント「スメルハラスメント」という言葉があるように、意図せず他人に不快感を与えてしまっては大変です。ワキ汗対策することは、集団の中で生活していくための大切なマナーです。